消費税頼みでなく、大企業の社会的責任で経済の再建を

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「エッ、いつの間に日本って、こんな国になってしまったの!?」と多くの国民が思っています。本当に信じられないくらいです。このままで良いはずはない、というのも実感でしょう。

失業者の増大、非正規雇用の増大、給与の切り下げなどで、生活を切り詰める家庭が増えています。社会福祉は切り捨てられ、病院での支払いも以前に比べずいぶん増えています。大都会では立派なビルが次々に建つ一方で、生活保護家庭も増えています。経済格差は大きくなっています。

では、ということで、何とかすることを議論する段になると、政治家や財界幹部は「国の財政が大変なことになっている。財源をどうするか」と言って、ほとんどが「消費税を上げることしかない」と言っています。

国民は、それらの発言に何となく納得しがたい気持を抱きつつも、やむを得ないのかな、と考える人もけっこういるのが現実です。「何となく納得しがたい気持」を起こさせているのは、そんなはずないのではないか、とか、どうも辻褄が合わないような気がする、といったことが、チラチラ見えるからなのです。私もまさにそうなのです。そこで、少しだけ、チラチラ見え隠れする辻褄あたりを探ってみました。その結果が、以下の報告です。

次の表(2007年)を見て下さい。

名目GDP  515.5兆円 総務省統計局HPより
大企業内部留保  229.1兆円
大企業経常利益   32.3兆円
雇用者報酬  262.1兆円 総務省統計局HPより
* 財務省「法人企業統計調査」より。銀行・保険を除く資本金10億円以上の大企業、


まず、日本の国全体の経済活動の大きさがどのくらいあるか。
これは、国内総生産、つまりDGPが相当するでしょう。よく使われる名目DGPを見てみると、概ね520兆円でした。

その内訳に相当するものを探すのですが、統計数字として何を持ってきたらよいのかよく分かりませんでした。そこで、それに相当しそうなものとして、まず、国民の働き分がどのくらいか。雇用者報酬というのがあるので、それを持ってきました。260兆円です。それに対応する雇っている側が得ているお金は、経常利益と内部留保分を合計してみました。すると、大企業分ですが、これまた260億円です。内部留保に莫大な額が回っていることが分かります。

これらを並べてみると、計算が合っているように見えるのはたまたまでしょうが、何となくそんなところかと思えます。経済活動により生み出された価値が、企業側と労働者側とに大体当分に分けられている、と考えられるわけです。

さて、これらの数字がどう変化してきたかを見てみます。



名目GDPは、おおむね500兆円前後を推移しています。この間、多少の増減はありますが、今、それは問題にしないでおきましょう。企業サイドへ分けられた分、つまり経常利益+内部留保は、着実に増加し、この間、増やした額はほぼ100兆円になります。他方で、雇用者報酬は、着実に減らし、この間、減らした額は20兆円に迫っています。

このことから見えてきたことは、一所懸命働いて産みだした冨は、大企業の経常利益と内部留保、とりわけ内部留保に回ってそれらを大きく増やし、他方で、雇用者の懐は確実に痩せ細ってきたという実態です。

企業が利益を上げるべきことは当然なのですが、内部留保を大幅に増やすと云うことはどういうことなのか、少し調べてみました。少し細かなところへ入り込みますので、先に結論を書いておきます。内部留保が増えすぎるのは、どうやら経済の歪みが大きいと云うことのようで、これを有効に循環させないと景気も持ち直せず、何よりも、政策実現の財源が出てこないのは当たり前なのです。ですから、この内部留保をある程度、経済の循環経路に回すようなことをしないと、健全な経済は実現できないようであります。

さて、そもそも内部留保とは何か、というと、

 内部留保=Σ(当期純利益−配当金)

これは、利益の面から見た内部留保です。資金調達側から見ることもできて、それは、

 内部留保=Σ(利益剰余金+資本剰余金+引当金+特別法上の準備金+
        土地の再評価差額金+金融商品に係る時価評価差額金+
        自己株式の増減額+その他の負債の増減額)

と結構複雑な構成になっています。右辺に、利益剰余金という項が見えますが、それを内部留保と呼ぶ場合、狭義の内部留保となります。上のグラフなどは、上式の内部留保(広義の内部留保)です。

つぎに、内部留保は、現金化できない性質のものなので、財源として期待できない、という意見があるようです。そこを見ておこうと思います。(ここ以下は書きかけです。データを得つつ改善して行きます)。

経済白書(2008年)では、固定資産が増えているので、「機動的に資産化できるものではない」と述べられています。しかし、工場など固定資産はほとんど増えていない実態があります。海外の関係会社への株式投資、これも固定資産に含まれますが、おもに、この部分が増えているのです。

大企業の製造業全体で見ると、営業資産は約100兆円から160兆円に増加しているのに対して、金融資産(現金・預金・株式)は、80年代から2000年代にかけて約50兆円から100兆円への増加であり、金融資産の増加が激しいことが分かります。すなわち、内部留保には、十分な機動性がある、つまり使えるのです。

つまり、生産された冨が、特に大企業の内部留保に大量にまわって、それが貯め込まれるか、海外投資などに回ってしまい、日本の経済を潤していないのです。そして、機動性はかなりありますから、それらを活用して、最賃を上げるとか、非正規雇用から正規雇用に変えるとか、また、大企業減税で内部留保を増やすのではなく、企業の社会的責任を果たすべく税金は応分に負担していただくことが有効な経済再生策になることが見えてくるわけです。

内部留保などに蓄積された大企業の力を活用して国民の幸せを作り出すことは可能であるし、そこにこそ財源を求めるべきなのです。そこに財源を求めず、消費税にそれを求めるのは筋違いなのです。

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