貧乏物語  新日本出版社 (2008/12)    河上 肇(著)
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大正時代の貧困と現代の貧困を比べてみよう,  2009/2/7

貧乏の実態、貧乏の原因、貧乏の根治法に分けて、貧乏を物語り、英国の政治家ロイド・ジョージを付録で紹介する。

本書は、大正6(1917)年に発行され大変よく売れたらしい。第1次世界大戦が勃発、株価暴落、米価高騰が起こり労働争議も頻発し、翌1918年には米騒動が起こった時代である。それから90余年経った今現在、新たな形態の貧困が問題になっているが、本書を読むとその実態、原因には当時と共通するものが多いと感ずる。しかし、その解決法に関しては、富者の奢侈贅沢を抑えることを第1にあげており、この点は、深化の不足を認めざるを得ない。わが国と河上の経済学の到達度を示しているのであろうか。とはいえ、本書では、自身の学問的知識・経験に基づく独自ユニークな分析により貧乏を分析しているが、それらを明快に理論として展開しており読んで実に分かりやすい。河上は、この後、マルクス主義の摂取に努め「第二貧乏物語」を書くこととなる。そのあたりは、巻末の林直道の解説に詳しい。

河上の原本は、文語調の格調高い文章からなるが、現代の若者には読みやすくない。そこで今回の版では、読みやすくするため、言葉遣い、特に漢字を現代風に改めている。例えば、「如何にして貧乏を根治し得べき乎(下篇)」が「いかにして貧乏を根治しうべきか(下編)」などである。そのため、文字が大きいこととあわせ読みやすくなっている。

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