続 コンゴ紀行−チャド湖より還る−    アンドレ・ジイド(著)   杉 捷夫(訳)   岩波書店(岩波文庫 (1988)  

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35年後の独立の正当性とその後の苦難の道を, 2013/3/13

続編では、チャド湖地方よりロゴーヌ河を南下遡上してマルア、ガルア(レイ・ブーバ)、ンガウンデレ、イアウンデを辿りドゥアラで記述は終わっている。コンゴ河口から測れば、多分、3000キロ以上になる長旅である。

この「続」では、自然景観や部落での土人の民俗の描写が多い。植物や風景は、時々、フランスと比較される。また、ディンディキという名のカメレオンを同道させていたことは前編からのことであるが、終り近くなって死んでしまう。ジイドの人柄というか、動物好きの一面が偲ばれる話ではある。

訪れる村ごとに酋長の出迎えがあり、村人の踊り、歌が振る舞われる。人々の衣装(をほとんど全くといって良いほど着けない人々も)はブーブーなど、いろいろなものが使われている。ツェツェ蠅による眠り病をはじめ病気のこともしばしば触れられ、ジイド自身も熱を出したりする。現地スタッフが途中で病死したりする。

ヨーロッパ権力による横暴支配の有り様は、勿論、「続」でも描かれ、それに対する現地民の多様な振る舞いも詳述され、植民地支配の実態の告発になっている。それを通して、現地人と上手く付き合う道が示される。

アドゥムという少年の話が第5章の章名の一部ともなって書かれている(特に124〜129頁)。その中から覚書としてひとつのエピソードを拾っておくと
「彼にパタ(五法の札)を十一枚たばにしてわたし、かう言ふ。『さあ五十法渡すよ。』・・・・・・
---『十法で煙草を買ひました、と、彼は私に言ふ。
---では四十法残ってゐる筈だね。
---違ひます。四十五法です。昨日五法余計下さいましたから。』そしてこれは世にも単純に言って除けられるのである。」と。

この旅程の国々は、ジイドが訪れてから35年ほど経て後、アフリカの年と呼ばれる1960年に独立を果たすのであるが、ジイドの記述によりこれらの地を辿ってみると、その正当性とその後の苦難の道をもいくらか理解できるのである。

なお、コンゴ紀行は、正と続とで訳者が異なるのだが、それを思わせないように用語法も含め配慮されているらしい。



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