絵で読む日本語〈上〉散文編 旺文社 (2003/12)   鵜川 昇(著)

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挿絵でなくイメージの展開, 2004/12/22,   2004/12/22

小説など散文のひとこまにそのイメージを最も良く表すと思われる絵画を対置させた美しい本です。

小説には挿絵がおかれることがあります。本書にも、島崎藤村「夜明け前」に向井潤吉の妻籠の風景画を、また、有島武郎「一房の葡萄」に対しいわさきちひろ「一房の葡萄と先生」を配したものなどがみられます。詩歌と絵を対比させた下巻に比べ、散文の場合は挿絵的になるのはやむを得ないでしょう。

しかし、本書の特徴は、それらをも含め50編の散文を取り上げ、美しく表現されたそれら散文が示す日本語の美しさ、リズムのイメージに対し、それにもっとも相応しいと思われる絵画を対置させることにより、日本文化の美しさに関する著者の主張を展開した本というところにあります。国語の教科書には、口絵にそんなねらいの絵や写真を見ることがありますが、この本は、もっと個性的で時に豪華です。

読者のもつ散文のイメージとこの本の示すイメージを比べて異同を吟味するのも面白いです。

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