俳句 その三

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10月から11月に入ると温暖化とはいえさすがに秋めいてくる。昼近くひんやりとしつつも日の光を受けた薮の袖に、まだ緑が残った葉の陰から赤ら顔のカラスウリの実がふたつみつ、顔をのぞかせていた。

 からすうり 輝きており 薮日向

 からすうり 恥ずかしげやな 薮日向

                                             (2006.11.1)


新幹線が東京に向け静岡を出てまもなく、北側の窓からは遠くの山々が望めます。朝、「今日は風が冷たいな」と思ったのでしたが、その山々に雪が乗っかっているではありませんか。その山々は、南アルプスの南端。平年だと1月になってからのことです。今年も異常気象の冬が来るのでしょうか。

  寒い、ふと見れば南アの嶺に雪

 富士山もくっきりと見えた。富士川には釣り人がじっと立っていた。

  澄みし富士 見て魚釣るは 人か樹か 

 茅ヶ崎あたりからは大山も高尾山もよく見えた。ところが東京の街は、どんよりとした空気に覆われていた。つくばに戻ったらくっきりと晴れていた。          (2006.11.25)

 静岡の街から南アの雪が見えた、と言ったら、「天気予報は、この冬も暖冬と言ってますよ」と師匠。そこで、それが「温暖化」の特徴で、だから「気候変動」の方が正確なんですよ、と

  「暖冬」に厳寒混じる「温暖化」
                                                (2006.11.26)

  冬はそれ 凛・暖・陰の三つ巴

  ペチカ燃え吹く風知らず北の宿                           (2006.12.12)


 すす払いをしていたら、障子に蟷螂ののそのそ動く陰が映っていた。今年も師走は温かい。

  蟷螂の影おぼつかずハタキ止め                        (2006.12.17)


  夜も更けて 今年を復習う 柚子湯かな                  (2006.12.22)


  陽も風も混ざり押し来る冬さ中

  枝ゆする筑波颪を陽がゆるめ
                                   (2007.1.11)


  時雨降り「マルテの手記」の頁繰る
                                                (2007.1.17)

  寒晴れの気を吸って立つ大欅        
  寒晴れの気を吸って立つ大榎(?)
                                                (2007.1.19)

  温暖の空コバルトに枯れ欅                     

(2007.1.27)


  節分の猫かまびすき夜更かな
  節分の猫かまびすき月夜かな
  節分の猫やかましき夜明かな


今年は、月が煌々とした節分でした。その深更、ギヤー、ギャ〜〜、と近所から聞こえてきます。「節分猫」という呼びかたもあるのだそうです。夜明け近くにも聞こえてきました。三つとも出すことにしました。

(2007.2.3)

  カーテンに春の陽映す出窓かな

(2007.2.10)

  如月の喉に優しき小雨かな 

(2007.2.14)


  山焼きの炎カルスト舐めまわし

秋吉台に春を呼ぶ山焼きが行われたテレビ画像にふれて

(2007.2.24)

  マグノリアと呼びし賢治のモダンかな           

(2007.3.16)

                                                 

伊勢路、鳥羽の旅舎にて

  伊勢路来て菜の花床し夫婦岩

  行きゆきて伊勢路なのはな夫婦岩

  日が伸びて釣り合う夕べ伊勢の宿

                                                  (2007.3.21)

  伊勢海老の腰しなやかに若布干す
                                                  (2007.3.22)

  

  鶯の声の向こうに英虞の海

  英虞湾に茜残して夕おぼろ

  海女の吹く磯笛寒し真珠島

  白衣着て鮫驚かし海女もぐる

  磯笛を吹く海女太る志摩の海

                                      伊勢旅行にて   (2007.3.23)

                                      

  伊勢の春お宮参りの児も眠る

                                  伊勢神宮(内宮)にて  (2007.3.23)


  夕暮れに 墨絵となりて 富士霞む

(2007.4.1)

  鈴の屋に 山桜花 散りかかる 

散る桜を眺めて、先週訪れた伊勢松阪、本居宣長旧居を思いつつ (2007.4.2)

次男身まかりて

  吾子逝きて星となりしか散る桜

  毎年の桜咲くごと吾子や来よ


                       

(2007.4.7)



  春の爺ひねもすぼけらぼけらかな
                                                               (2007.4.19)

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