『日本文学史序説』補講  かもがわ出版 (2006/11)  加藤 周一(著)

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「日本文学史序説」がもっとよく理解できるようになる本です 2006/11/20

まさに補講。五つの講を通して、原書「日本文学史序説」の理解を深めるために有効な論を、参加した読者の質問に答えつつ、著者の加藤さんが展開してくれました。著者が、いろいろな箇所で何を考え、どんなことをねらって書いたか、原書には書かれていないことを興味深く紹介してくれます。

例えば、「文学」をなぜ、どのように広くとらえたか。原書の題にある日本・文学・史のそれぞれをどう考えたか。源氏物語のすごさはどこにあるか。新井白石、本居宣長、福沢諭吉などになぜ注目するか。近代文学が、第4の転換期ということでなぜあんなに簡略にされてしまったか、等々。また、日本古来のものを知るのに、例えば、外来文化に影響されて変化して目の前に現象しているものを、それに影響をあたえたおおもとの外来文化を手がかりにしてベクトル分解して知ろうとした、という図入りの解説などは、加藤さんの面目躍如。自然科学にも通じた広い視野・視点と独創性に感服です。新たな納得の連続です。

この本のもとになった信州・追分の初秋の学習会がどんなにか知的刺激にあふれ、楽しく充実したものであったか。まえがきやあとがきによると裏話、日本の現在に関する議論なども別にあったという。本書で、それらの息吹をいくらかなりとも感じつつ原書の魅力に今一度接してみませんか。


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