宮沢政次郎、つまり賢治の父に焦点をあてた小説である。
 賢治をはじめ、子ども達に厳しくあたろうとするけれども、結局甘くなってしまう父親。賢治が病気になれば病院に泊り込み看病する。「質屋に学問はいらねー」という隠居の祖父喜助の言に対し、中学校へ行くという賢治の肩を持ち、店を継ぐ話があったにも拘わらずそれを沙汰止みにして高等農専に進学することに承諾を与えてしまうところなどにそれは現れる。宮沢家が「南無阿弥陀仏」なのに対し賢治が「南無妙法蓮華経」を唱えるのに異論を持っても、賢治が亡くなって政次郎は「改宗しようか」と思うのである。
 本作は、賢治の所業を網羅せず、父との関係において必要なエピソードのみで構成される。それゆえ、賢治の全体像は見えない。それは、妹トシや弟清六にしても同様である。

銀河鉄道の父    門井慶喜(著)  講談社 (2017/9/13)  

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宮沢賢治にとっての父親像,  2018/3/91











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