老年の豊かさについて  キケロ(著) 八木 誠一・八木 綾子(訳) 法蔵館 (1999/05)
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老人の本性を説く現代的な書
, 2007/1/14

キケロは紀元前数十年前後の人だが、その説や、まことに現代的。とはいえ、この書は、ひとり暮らしや介護など、老人問題の書ではなく、老人の本性を説く書である。それも、小難しく哲学を説くのでなく、例をあげつつ、世にある通念に反論する形での分かりやすい説明。もっとも、その例にのぼる有名人が我々現代人に馴染みの薄いのはチョットした難点。しかし、それをクリアーしたければ訳者が解説を付けてくれているので問題ない。

キケロの説くところを現代人が繰り返し読むと、老人は元気になり、若者は老人の見方や老いることの考えを改めるかも知れない。その基本のひとつだけを紹介すれば、老いも自然のこと、それをしっかり理解しなさい、と説くところ。

古代ローマでは人は長寿だったのか、90何歳の元気な老人の話がいくつも。今と違わない。社会は進歩しても人間はそのころから本質的に進歩していない。悪知恵が増えボケが進んだ分、退歩している。

この本の特徴のひとつは、厳密さをむねとした逐語訳などと違い読みやすい口語訳というところにあり、実にありがたい。訳者も言っておられるとおり「暇な午後などの一時を、この訳で楽しんで」みると得るところ多く、繰り返し読んでみ たくなるであろう。

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