完訳 ファーブル昆虫記 第5巻 上
ジャン=アンリ・ファーブル (著), 奥本 大三郎 (翻訳)    集英社 2007/5

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奥の深いふん虫の世界,    (2007/7/29)

この巻(第5巻上)では、スカラベ・サクレをはじめふん虫のみ。ふん虫は、第1巻の最初をはじめ、この後も何章かにわたって登場する昆虫記の主役中の主役。日本人にふん虫が有名だとしたら、第1巻の始めに登場するのと、第5巻を中心に詳しくに描かれ、ふん虫の世界の多様性と不思議と美しさなど、奥の深さが眼に浮かぶように書かれていることによるのではないだろうか。

この巻では冒頭に「はじめに」を置いて、ふん虫を中心に自分がどのように昆虫に接してきたかなどを述べている。とりわけ、彼が、飼育箱などを工夫して作ってふん虫の生態を実験的に調べると同時に、それを実地に検証してみることの大切さを述べているのは、自然界の物事に接するときにとても大切なことである。コンピュータを使ったシミュレーション技術が発達した現在、このことをもういちど胸にたたき込んでおきたい。

奥本さんによる解説を読むと、ふん虫の生息分布がファーブル時代に比べ、最近ではずいぶん狭くなったとはいえ、結構、あちこちにいるようだな、と感じた。それは、「安野光雅のファーブル紀行」「NHK『ファーブル昆虫記』の旅」などで、ふん虫を探すのにずいぶん苦労した話を読んでいたからで。今進みつつある地球規模の気候変動で、これらふん虫の生息分布はどう変わるのだろう。

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