流れを変える時・・・・維新八策でなく庶民発奮を

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AIJという投資顧問会社が、中小企業84の年金基金から資産を預かりながら、資産運用に失敗してスッカラカンになったという報道には、本当にビックリしました。聞いてみると、グローバル金融の荒波の中、租税回避地の英領ケイマン諸島を通じて資金運用をしていたとのことです。まさに、多国籍企業や投資ファンドの暗躍する世界に飛び込んで失敗した典型例のようです。私は、この事件を巡って、世の中の大きな動きを、私たちの身のまわりと関連づけながら、こんな風に読んでみました。以下をご覧下さい。

ソ連崩壊で、資本主義バンザイ、と言っていた世界の経済も、グローバル経済、市場経済の強調、規制緩和などと、つぎつぎに新たな手を打ち出さないとこれ以上の利潤を追求し冨を積み上げることが難しくなっていました。その中で、強力な戦術として登場したのが、金融工学なる科学的装いを持った世界規模の投機の戦術でした。コンピュータを使って、あらゆる隙間を掻き集め、組み合わせて利ざやを稼ごうという戦術です。世界の経済の主流は、それを中心に金融または投資から日常的な経営まで再構成されて行きました。まさにグローバルな構造改革です。私たちの身のまわりでは、銀行と証券会社、都市銀行から信用金庫まで規模の違いは見えてもその他の違いが見えなくなってしまい、なけなしの貯金も、定期預金からさまざまな金融商品に移し替えられ、知らぬ間に世界の金融市場を駆け巡ることになっていたのです。実体経済といわれるところのものづくり中心の経済から、輸出や海外進出へとグローバル化を進め泡銭的経済の色が濃くなっていったのです。

日本の政治も、その流れに乗って、小泉劇場のワンフレーズのセリフで踊ることになりました。規制緩和、構造改革路線、シーリング、福祉予算の毎年切り下げ、小さな政府という予算と人員の切り捨て・・・等々が次々と実行されました。そのもとで、非正規雇用の増加、年金や勤労者賃金の切り下げ、それらによる諸格差の拡大、生活の質の低下などがすすみ、諸階層からそれらに対する反撃が起こり、その象徴が、民主党のマニフェストに集中的に書き込まれ、民主党政権の出現となりました。竹中平蔵元大臣は、構造改革半ばで中断したら、日本経済の繁栄は潰えてしまう、と恨み言を発しました。その後の民主党政権の有り様は記憶に新しいところです。

こうした流れの欠陥に由来する傷口は、事態の進行に比べやや遅れて、あるいはかなり遅れて出てくるものの如しです。金融工学による泡銭経済で儲ける者が出る陰には被害者がでるのは大いにあり得ることです。大王製紙もオリンパスもAIJも、まさにそうしたグローバル経済のなかでの敗者であり、その影響を被る多くの社員や庶民は被害者です。まだ、驚くようなことが起こるかも知れません。それらを未然に防ぐ力が、少なくとも今の日本の政権にあるとは思えません。それどころか、今、準備されている消費税増税をはじめとした「一体改革」を実行したら、日本経済はガタガタになる可能性さえあると予測されています。違う道を選択する必要があります。

ところが、逆に、竹中氏の恨み言を、俺が実践してやろうといって言葉の魔術を使って踊っているのが、橋下徹大阪市長です。彼ら(「大阪維新の会」)の「維新八策」(骨子)をみると、目標は、かつての自民・公明政権の政策の継承・推進といってよい中身です。つまり、彼によると、それを実現するのにあたって、かつての自民・公明政権はやり方を間違えた、障害となっている政治構造や統治機構、社会システムを変えないとダメなのだ、大阪でいえば、府と市の二重構造をぶち壊し一本化し効率化する、抵抗勢力である一部教職員は黙らせ首長の方針を円滑に実行できるようにする等々、それらにより、更なる大規模開発などを展開できるようになり、それにより経済成長を実現できる、そのために、こういうことを当面実行する、これが「維新八策」である、というわけです。国民には我慢して貰いまっせ、というところが実に多いのも特徴です。

しかし、上記した世界と日本の現状認識からすると、これで日本がうまく動く保障は見えてきません。経済でいえば、泡銭を中心にした輸出依存の金余り財界から脱却し、真に国内需要の活性化を実現し、真に持続が可能な経済を作り、日頃、冨を生み出している庶民や中小企業が元気になる世の中をめざすべきです。これが経済の本道だと思います。政治は、それをすすめるために動くべきです。

そのために庶民は何をなすべきか。まず、上記の私見が正しいかどうか、から始めて、もっとしっかりした経済分析を権威ある情報に基づきやって頂きたいです。そして、その知識でよく考え、小さくても良いから足を踏み出し行動することが基本だと思います。インターネットで意見交換するのも良いことです。地域の、たとえば原発や消費税の学習会に参加して議論したりパレード、デモに参加できればすばらしいと思います。被災地のことを学び、自分に出来ることを探し実行する・・・等々。要は、一人ひとりができるところから行動すること。勿論、選挙に行って自分で判断した良さそうな候補者に投票すること、その時は、だまされないようにすること、これが肝心ですね。世の中を変えるのは、他人ではなく、自分です。庶民が発奮すべき時です。

そうしたところから、日本の春もやってくるのだろうと思います。

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