パルムの僧院(上・下)   

スタンダール(作) 生島遼一(訳) 岩波文庫  1969/1/1・1970/2

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後味のとても良い小説 , 2017/9/20

当時の社会背景、特に貴族社会がどうなっていたのかなどの知識、情報が頭にないので、必要以上にややこしくて戸惑う。しかし、18世紀末から19世紀初頭にかけてのイタリアの小国家分立の中で、貴族たちがいかに勝手気ままに国を弄んでいたかは、よく分かる。そうした背景の中で、主人公ファブリスが、ナポレオンを慕い、フランス軍の戦争に加わり、いろいろ経験しながら、やがて殺人犯に仕立て上げられ、牢獄に入ることになりながらクレリアと相見えることとなり、二人の愛の交換を軸に物語は後半に突入してゆく。他方、叔母サンセヴェリーナ侯爵夫人がファブリスにひとかたならぬ気持ちを持ち、彼の苦難に寄り添い助け続ける。一旦、ファブリスが毒殺される危険がある中で脱獄に成功するも、クレリアの顔見たさに自ら監獄に戻ったりする行動は意表を突く。そして、実際に二人は堅く抱き合い・・・。ここで、スタンダールは、あっという間に子どもをもうけることになったことをサラリと書いてのける。終盤の展開は早く、子どもサンドリーノの誕生、誘拐、死。クレリアの死。そして、ここに至って初めて出てくるのだが、パルムの僧院へファブリスが入り、やがて死を迎える。サンセヴェリーナ侯爵夫人の死があり、その後、パルムの牢獄は空になる。この作品を読む前には、多分、『薔薇の名前』のイメージが影響していたのだと思うが、最初からパルムの僧院が舞台となっているように思っていた。これも、読んでみると全く間違いであることが分かる。
難しいところも多いが、読み終わってみると、後味のとても良い小説である。

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