サンクト・ペテルブルクの異邦人 芸術と文化、歌と生活   山田 実・山田 ゆきよ(著) 未知谷 (2010/06)

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いっそう文化の薫り高く, 2011/10/20

前著「サンクト・ペテルブルク断章」の続編です。著者らご夫妻は、1997年から3年間、サンクト・ペテルブルクに滞在し、往復は都合14年間に及んでいます。その途次の経験を元に、副題にあるように、芸術と文化、歌と生活を中心に書いたエッセイが本書です。歌については、ゆきよさんにもっぱら依っています。

著者の一人、実によると、ロシアは近くて心理的にはとても遠い国となってしまっていますが、日本はロシア人にとっては経済上も文化上もある種の畏敬の念すら抱く国のようだ、とのことです。たとえば、ロシア人には「日本が好き」と答える人が多い(ある統計では74%)といいます。そこで、著者は、まず知ることから始めるしかないといっておられます。

著者達は、そんな視線をもって、ロシアの代表的都市としてのサンクト・ペテルブルクとそこに住む人々を、芸術と文化、歌と生活を主な題材として紹介してくれます。もちろん、前著と同様に、地図を示していろいろな場所についてエピソードを交えて紹介してくれます。しかし、この本の特徴として、ゆきよさんの筆になるロシヤ・ロマンス(歌曲)についてご自身のレッスンの様子などを交えて紹介していることが注目されます。ロシア民謡は、日本人にとって親しいものですが、それゆえに民謡と歌曲がごっちゃになってしまっているところがあります。その違いにくわえ、有名無名なロシヤ歌曲を紹介してくれていて興味深いです。

また、後半の二つの章「人々のきずな」「人情は紙とは違う」などにおいて、何人かの人々についてやや詳しく描いていてしみじみと読むことが出来ます。

前著と合わせて読んだあとには、ロシアに関する理解がとても生き生きとしたものになっていることに気がつかれるのではないでしょうか。そして、ロシアに足を運びたくなるかもしれません。

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