詩と永遠      辻 邦生(著) 岩波書店 (1988/07)

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辻邦生の作品を読む人にも、小説を書く人にも,  
2015/2/12

 辻邦生は、文学論を「小説への序章」を皮切りに、没後出版の「言葉の箱」までたくさんの論文、エッセイ、単行本として出しておられますが、この本は、その途上での中間総括といえる書物です。1979年から1988年まで約10年間にわたって、書かれ語られたものからなります。冒頭に論文1編をおき、その後に講演8編を配しています。それらを三つの篇に分けてあり、それらタイトルは、T.詩と永遠、U.美とよろこび、V.新しい小説のために、です。

これら3篇のタイトルからだけでも、辻文学の特質が見えてくるというものです。つまり、<永遠>につき独特の時間論を強く意識して論じます。時間をどう生きるかにおいては、<開かれた時間>という考え方を示します。辻は、<美>を深く掘り下げて追究します。また、小説にも「詩」を感じて書いた辻でした。そんな小説をどう書くか、それは、当然のこと、常に強い関心であり続けましたが、その時点における考えが、パリにおける講演をもとに最終章で実に簡潔に分かりやすくまとめられています。

辻作品を読む人にも、小説を書く人にも、まことに興味深く読める書物となって残されました。

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