「生命とは何か」(シュレーディンガー)を読んで

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この本には「物理的に見た生細胞」という副題が付いています。つまり、物理学の立場から生命をどう見るか、を扱うわけです。

まず、遺伝の仕組みに対し考察を行い、遺伝子の大きさや永続性という特性に注目します。突然変異に対する考察を通して、その不連続性に注目します。そして、それらは、古典物理学では説明しきれず、量子論ではじめて説明可能となるとして、突然変異と量子飛躍の関連を考察し、遺伝子という分子の安定度がいかにして得られているかを示してくれます。そこには、熱力学の第2法則も貫徹しており、生物体は環境から「秩序」を引き出すことにより維持されていると論じます。かくして、生物は、非周期性結晶を歯車とする時計仕掛けのようなものであると要約します。さらにエピローグでは、それらを哲学的に敷衍して、「私」とは、「原子の運動」を自然法則に従って制御する人間である、という論をも導き出します。

この本に触発されたワトソンとクリックが、この本の出版から10年後にDNAのらせん構造を提起するのですが、実に、上記の非周期的結晶の基本物質がDNAだったわけです。

しかし、この本を読んで感じたのは、そのような先駆性のみならず、内容の広さ、深さでした。

まず、生命の全体像を理解する上で、この本の示唆するところは大きく広いのではないか、ということでした。分子生物学から生態学まで、生物学に関心のある向きは、本書を繰り返し精読してシュレーディンガーと対話を深められたら得ることが多いのではないでしょうか。そのためには、この本、現在品切れ、是非、重版をしてほしいところです。

つぎに、この本を自然界の階層性の概念により再構成しようとしたら、おもしろそうなことが脳裏に浮かんできました。次のようなことです。

自然界の階層生のうち、素粒子から細胞までを考えてみましょう。階層間には、量子飛躍のような不連続があります。その不連続を、何かを媒介にして克服できれば、より小さな階層の物質から、1階層大きな物質を作り出すことが出来ます。原子がある種のエネルギーを媒介に分子を形成することは、その分かりやすい例です。これは合成化学の基本命題です。われわれは、その方法をかなり昔に身につけることが出来ました。分子を、どのようにして何を媒介として再構成するとたとえばDNAを作り出せるのでしょうか。これは分子生物学の基本命題です。われわれは、この方法をも今ほとんど手にしています。それらのうち、コストの問題などをも克服できるものは、技術として社会の中で活用されています。

ところで、「媒介」と記したところに光が関与することが出来るのでしょうか?晝馬社長が、「レーザーで核変換が出来るんだから、デンプンだって、出来ないか?」と問われるのは、さしあたって、そんなところをイメージすることなのでしょうか。

農業ホトニクスでは、機能性食品の高付加価値や光計測技術の応用分野の拡大など、身近に商売になる技術を作り上げながら、それらを通じて、上記のようなところで光を媒介に、現状ではバイオマスに頼っているような原材料生産を考えてゆく必要があるのではないでしょうか?

いかがでしょう?何か脈がありますかね?

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