クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国   若桑 みどり著  集英社   (2003/10)

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近現代の歴史までも見直させるほどの力作, 2005/7/19

戦国の世を信長が抜け出してから、秀吉、家康、家光までの時代は、疾風怒濤の時代。その中を時代に揉まれて生きたクアトロ・ラガッツィ(4人の少年たち)。

中学校で習ったのは、ザビエルと天草四郎と家光による鎖国令くらいで、天正少年使節については記憶に残る程には習わなかった。高校では、歴史は世界史を選択(個人のことですみません)。が、いずれにせよ、こんなに濃密にこの時代とキリスト教、少年使節の足跡などを著者と歩むと、今までとは違った歴史観を持つことになる。つまりこの時代は、日本も世界、特にヨーロッパ諸国やアジア諸国と対等につきあい始めていた(少年達も滞欧を通じそれが出来るまでに成長した)し、キリスト教の日本への浸透も、常識以上に広範なものがあった等々、新しい視点にたたされることとなる。それだけに、たとえば、ナチスのユダヤ人絶滅計画に比される程のキリシタン弾圧とその屍の上に築かれた鎖国体制は、また常識と違った意味合いをもったものに見えてくる。とすると、明治以後の歴史までも見直したくなる。本書は、それほどの力作。

女性の目から見たキリスト教や仏教、歴史書の批判的読み方、宗教の優しさと残酷さ、世界や歴史においてもっとも大事なのは何か、等々、要所々々で示唆してくれるところも読んでいて面白い。

緑陰もよし、秋の夜長も、暖炉の前もよし、じっくりと読んでご覧になることをお薦めします。なお、少年使節達の足跡をひととおり詳しく追うには、松田毅一(著)「天正遣欧使節」(講談社学術文庫)がお薦め。

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