ロシア革命史(5)    岩波文庫 (2001/05)   トロツキー(著) 藤井一行(訳)
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今、読むにもっとも値する歴史書のひとつ,  2009/5/3

十月革命は、全ロシア・ソヴェト大会の会期中に冬宮が占領され臨時政府が壊滅し、基本的に達成
されます。本分冊では、その間、ほんの数日の出来事が、権力を握るための攻防を中心に事細かに
描き出される。主として蜂起の是非、在り様(よう)、そのタイミングなどをめぐり幾多の議論が
幾多の場所で幾多の機会に繰り広げられます。著者トロツキーとレーニンとの言動・立場・意見の
異同、スターリンの言動に関するトロツキーの考えなど、興味深い記述も目につきます。本文末の
長短4編の付論も、トロツキーの永続革命論をちりばめながらのおもにそれらに関する議論です。
それらの経過・内容は、多岐・多彩にわたり、読者はしばしば理解に困難を感ずることがあります
。それを補ってありがたいのが巻末の付表であり、日を追って出来事を整理してくれています。

本分冊で印象深いのは、十月革命の権力奪取が、世間でいわれているのと異なり、節目々々で民主
的な手続きが追求され、武力が行使された場面も少なく且つ流血も多くなく、そして、それらがト
ロツキーに負うところが結構多いということです。

また、陰謀、蜂起、民主主義といったことば遣い、あるいは概念に微妙に違和感を覚えました。そ
れらを吟味する読み方もあって良いのかも知れません。

全五冊を通読して言えることのひとつに、次のようなことがあります:ソ連など社会主義国と言わ
れた国の多くが社会体制を転換した一方で、資本主義国においても百年に一度という金融・経済危
機にみまわれ資本主義の本質が問われています。そんな時にあたって、ロシア革命とは何であった
か、それがなぜ挫折に至ったのか、これからの歴史はいかなる道をたどるのかなど、宿題が提起さ
れています。この本は、それらを考えるいとぐちを与える格好な歴史書ではないか、ということで
す。

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