女の一生〈2部〉サチ子の場合 朝日新聞社 (1983/12)   遠藤周作(著)

                                            宗教の目次へ

あの戦争の時代に「神」を求めて, , 2010/2/13

作者遠藤の「母なるもの」「神」を探る旅のワン・ステップが、戦争の昭和とアウシュビッツとを舞台にして展開されます。

第1部で追及したテーマを、作者は、軍部の力が強くなりだした昭和初期から始めて、太平洋戦争で原爆が落とされ敗戦に至り戦後しばらくまでの歴史の中で追及し続けます。主人公サチ子は、教会仲間の修平に徐々に愛を感じ始め、大学生になった彼と互いにそれを確かめ合います。しかし、戦争の波はその愛の成就をゆるしてくれません。また、長崎からポーランドに帰ったドロ神父はアウシュビッツに送られます。そうした時代、キリスト教は彼らにとって何であったのか、ここでも作者(修平は作者と同世代である)は読者と共にその答を探そうとします。

第1部は、多くの読者にとって既に歴史となっている時代を通しそのテーマを探ったのですが、第2部は、かなり現代に近い出来事を通し探ることとなるので、より身近な問題として読者はそれを考えることになるでしょう。第1部は歴史小説として読んだ読者が、第2部は現代小説として読むこともあり得るのです。つまり、第2部においては、現代を生きる我々にとってキリスト教は何なのか、を考えることが出来るのです。

この二冊の前に遠藤には「沈黙」があって、そこでもキリスト教に対する問題を提起していて、それから続くテーマでもあります。それぞれ異なる時代を舞台に探求を続ける作者の筆はドラマチックな展開で読者をつかんで放しません。そして、晩年の「深い河」までそれは続きます。「母なるもの」などをも含め、作者と読者の旅のワン・ステップなのです。

宗教の目次へ
図書室の玄関へ
トップページへ