裂かれた大地―京都満州開拓民 二松 啓紀著  
                二松 啓紀(著) 京都新聞出版センター (2005/07)
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名も無き民の悲劇が歴史になった,
2005/7/18

昭和20年、ドイツが無条件降伏をしている頃、満州で別天地を、と農業をしたこともない人たちが、その目的地に着いた途端、聞かされていた家も水道も耕地もないことを知り「だまされた」と思ったが、もう遅い。何とか播いたイネの丈が腰ほどになった頃、父親は応召、女子供だけになったところに、避難行があわただしく始まる。松花江をハルビンへと逃げる船にソ連軍の機銃掃射と爆撃・・・。あとは、本文をどうぞ。

この本では、著者の主張はまったくあからさまではありません。事実をして多くを語らしめています。たとえば、満州開拓団とは何だったのか、をひとりでに考えさせられました。でもそれは、私の読み方であって、他の人は別の読み方をするでしょう。どうやら、よく書かれた事実は、限りなく多くの読み方を誘導するようです。

従来の歴史は、英雄の歴史でした。この京都満州開拓団の顛末には、そのような英雄は現れません。したがって、この顛末は歴史として残されませんでした。しかし、近年の歴史の見直しにより、名も無き民が歴史の主人公に出ることが多くなりました。この本により、表紙に「記録なき歴史」とある通り、歴史の一頁として多くの人々にしっかりと根を下ろすことになりました。そして、この開拓団の人々の歴史こそが、「英雄」の事跡以上に、歴史の大きな流れをつくってきたことを、そして未来の方向を知る礎となることを思わせます。

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