聖霊の島 集英社 (1999/10)   工藤 美代子(著)

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ハーンはなぜか女流作家を惹きつける , 2004/8/11

ラフカディオ・ハーンは、この本で描かれるヨーロッパ時代の後、アメリカでの生活、マルティニーク島への旅などを経て日本へと足を移す。この本は、そのような長い旅の最初の部分を扱った評伝。紀行文でもある。まずは、母ローザがアイルランド人の父親チャールズと会ったギリシャの小島キセラ島。ハーンが生まれたレフカダ島、そして、アイルランド。著者は、ローザが晩年を過ごすことになるコルフ島をも訪ねている。これらの島々は、著者によれば、どの島も聖霊の島。「太陽が光り輝くギリシャの島で、ハーンが母親の腕の中にいた二年間は、まるで美しい聖像画のように幸福な日々だった」「彼の生活は宗教によって守られていた」そして、ハーンにとって母親ローザは聖霊にまでなっていた。

 それぞれの島を訪れたときの写真も多く、モノクロームであるがどれも美しい。よく見ると著者がさりげなく入った一枚も。

 この本は、女性の目から見たラフカディオ・ハーンを、そして母親をも見事に描いていると思う。著者は「ハーンはなぜか女流作家を惹きつける」と記すが、読書子はそのあたりをどうお読みになるであろうか?



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