戦争と教育―四つの戦後と三つの戦前    山住正己 (著)  岩波書店(岩波セミナーブックス (66))  (1997/11)

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戦争はもうまっぴら、と教育を考えようとする人々に,   2008/3/14                                    

日清、日露、第2次大戦という日本が本格的に参戦した戦争を挟んで四つの戦後と三つの戦前において、教育がどう戦争と係わってきたか。それをテーマとして五回にわたって行われた岩波市民セミナーからこの本は生まれた。したがって、話し言葉風で読みやすい。

具体的な史料を使いながら、著者の経験に裏付けられた広範な知識を駆使して、戦争と教育の相互作用を解き明かしてくれる。特に、第二次大戦に至る歴史の中で、国民をほぼ完璧なまでに思想統制下に置くことに成功した主要な原因として教育が上げられることが多いが、それが明治維新以後、特に教育勅語以後、どのように築かれたか、その中で、それに対抗する動きはどのように存在し、消えていったか、今次大戦後は、いかにして民主主義教育がもたらされ、その中で戦前からの残り滓がいかに復活をねらってきているか、などが示される。

戦後制定された教育基本法が2006年に改定された今、その動きを、歴史の流れを逆方向にたどって憲法改定にまで至らしめることは、この本を読んだ後では、全く良くないことと理解できる。皇国史観などのイデオロギー的論理に対して、この本は、史料などを使って事実として教育の歴史を解明するので説得力が格段に違う。10年余り前の本であるが、戦争はまっぴらだと思って教育を考えようとする人々に、今改めて読んでご覧になりませんか、と薦めたい本のひとつである。


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