白い崖の国をたずねて―岩倉使節団の旅 木戸孝允のみたイギリス  集英社 (1997/03)  宮永 孝(著)

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「米欧回覧実記」第2巻のより多角的理解のために 2004/9/22

久米邦武編「米欧回覧実記」(全5冊、岩波文庫)の第2冊に相当するイギリス編の岩倉使節団の行程を、その使節団に同行していた木戸孝允の日記などで補充しつつできるだけ客観的に追った第1部。第2部は、岩倉使節の意義を同時代における他の訪英邦人の事跡をも見ながら考察している。

 この本の長所は、特に第1部において、「実記」第2冊では省略された行動などを補充し、より全体的に知ることができるようにしてくれた点だと思う。第2部の考察自体はさほど新味はないと思われるけれど、他の使節をも含めて岩倉使節の意義と限界を読者が自分自身で考える情報を提供してくれる。それらによって「実記」第2冊を(また、読み方如何では岩倉使節全体をも)より多角的に理解することを可能とする。

 ちなみに、白い崖については、「実記」第3冊(の原本第四十二巻)で、ジュリアス・シーザーはドーバーの「白堊粉壁」を望んで英国に侵攻したことを意識したと記しつつ、霧の多い英国故「今日モ亦対岸ミルヘカラサルノ天ニテアリケリ」と嘆いている。

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