収穫(上)    萬里閣 (1946)  クヌート・ハムズン(著) 宮原晃一郎(訳)  

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土をはじめとした自然と人間のあり方を考えさせる題材でいっぱいです, 2014/8/8

あらすじ
ある旅人(イサク)がこの地(ノルウェーの山間の地で海からはやや距離があり、山を越すとスウェーデンです)に辿りつきます。そこの木々を伐り開墾しやぎや羊を飼い、やがて馬鈴薯や牛、豚などを飼います。ここを訪れるのはラップ人くらいです。そのラップ人に、手伝いの女性がいないか、と聞いている内に、それを聞きつけた一人の三ツ口の女性が訪ねてきます。その女性(インゲル)と一緒に暮らすようになり、やがて男の子どもが次々に生まれます。農場も大きくなり動物の数も増えます。警務官ガイスレルは、彼らに援助の知恵を与えたりして助けます。近所に農場が少しずつ増えますが、中には意地悪い人もいます。オリーネ叔母さんも訪ねてきたりしばらくすんだりするがあまり仲がよくありません。それらとの軋轢のなかでも、大地とともに生きるイサクとその家族は幸せな生活を気づいたように見えました。ところが、イサクが市(まち)におりている間に生まれた女の子に恐れたとおりの三ツ口の障害があることが分かり、インゲルはその子を殺してしまいます。やがて、その罪で刑務所に数年を過ごすこととなります。その間、子どもたちは育って行きます。刑期を終えたインゲルが三ツ口も手術で治り帰宅し、刑務所で生まれた女の子が新たに加わります。男の子たちもそれぞれ生長し、長男(エレセウス)は市で教育を受け、次男(シヴェルト)はイサクと農業を支えます。退官していたガイスレルが、イサクの山の銅鑛を調査し、その採掘権を購入します。エレセウスのロマンスが紆余曲折するところで上巻は終わります。

この本は(上)となっているのですが、同じ本屋からは(下)は出なかったようです。完全な翻訳は、「土の恵み」という題で新潮文庫(1944)に集録されていたようですが、今や、なかなか眼にできません。

1920年ノーベル文学賞受賞作品

感想
多分、近代文明批判を裏にたたえて、イサクとインゲルの生き様を描いているのです。近年の先進国における環境破壊や格差拡大などを振りかえると、この作品のような人生を考え直してみることが意味をもってくるように思えます。何が本当に大事なのか、大事なものやことを気づかずに失おうとしているのではないか、この本を読みながら、私は、いろいろ考えさせられました。


筑波大体芸図書館で借りて読みました。裏表紙がぼろぼろになったスゴイ本を気をつけながら読みました(写真参照)。「東京高等体育学校」のラベルが貼ってあり、東京体育専門学校図書印が押されていました。

  

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