詩のささげもの 新潮社 (2002/05)  宗 左近著(著)

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新しい詩の生まれる予感,
2002/9/28

この本は、通り一遍の詩の解説書とは違います。ひとりの詩人が詩をどう読んできたか、とりわけ1945年5月25日または同年8月15日を頁の折れ目のようにして、詩を書くことにどう生を向けてきたか、心のかぎりを綴った本です。

現代詩が、読者の立場からすると、一見、難解な言葉遊びのように見えることもあったけれど、宗さんの読み方に接してみると、それは通り過ぎなければならない青年期の活力の必然的な表れであってそれに続く豊饒な生産の準備となっているように読めるのです。

透明光体あるいは魂、その原体のことを宗さんは「神さま」と呼びますが、この本はその意味での神さまへのささげものとのことですが、同時に私たち読者へのプレゼントであることも間違いありません。しかし、私のように、まねごとをこころみる者には、詩を書く手を鈍らせるような、近寄りがたい崇高ささえ感じさせます。

内外の近代詩にきら星のように散らばる天の才が、その後に生まれてきた多くの詩人の栄養となって、今、また新たな星が生まれようとしている予感が伝わります。新たな星は、どんな姿形をしているのか、顧みれば、ランボーや賢治のように、時代の不条理に全身で組みついたあげくに巧まざるかのように時代を突き抜ける力を「音響と映像の有機体」として表現するものであることを、宗さんは示してくれます。

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