漱石の巨きな旅  NHK出版 (2004/7/25)  吉本 隆明(著)

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「旅」ではなく「漱石」を論じた本, 2004/10/23

著者は、漱石の生涯で最も大きな旅を英国留学と満韓視察ととらえ、書名にも、目次にも「旅」という語を頻出させるけれど、そして、2部構成の後半の「『満韓ところどころ』の旅」で比較的多く旅論を展開しているけれど、その主眼をどちらかといえば旅ではなく漱石の文学を論ずることにおいています。しかし、これは、あとがきと編集部による後注を読んで分かったことですが、本書が、Voyager avec Natsume Soseki というフランス語の本の序文であるためなのです。つまり、その仏本に収録された「倫敦塔」「カーライル博物館」「満韓ところどころ」、日記のいくつかなど6編が「旅」の部分を構成していて、その解説として本書があるためなのです。その意味からは、その6編を会わせ読んで見るのが良いのでしょうが、本書だけでも、そのふたつの大きな旅が漱石と彼の文学にどう影響したかを考えることは十分出来ます。吉本さんの論をどう読みとるかは、勿論、読書子のすさびに属します。

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