旅する哲学―大人のための旅行術  集英社 (2004/04)  アラン・ド・ボトン(著) 安引 宏(訳)

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自分の旅に磨きを掛けるために, 2004/4/24

哲学なぞとうたっているから、珍しいもの見たさや気晴らしの旅行で満足している人がこの本を手にすることは少なそう。たしかに、哲学者である著者が、旅人として著名な西洋人を引っ張り出してきて、旅のすばらしさを体験させてくれる本であって、いわゆる旅のノーハウ本ではない。パック旅行に限界を感じている人または自分の旅行術をもっている人には、こんな旅もあるのだぞ、という著者らの主張を考察し、自分の旅に磨きを掛けるために是非読んでほしい本。どんなふうにして磨きを掛けるかといえば、批判的に読むことなどはその一例。すなわち、旅の写真について引き合いに出しているけど、ちょっと違うんじゃない?写真だって、美しいものを感じ取りそれを切り取らなきゃ、写真じゃない、ファインダーをのぞいてシャッターを切ればいいってもんじゃないよ、あなたやラスキンがおっしゃるスケッチや絵と本質的に違わないよ、などと。つまり、自分の旅を対置するってこと。
 
 でも、珍しいもの見たさや気晴らしの旅行で満足している人にも、もっと違う旅もあるんだぞ、ということに気がついてもらう意味において読んでほしい本でもある。

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