地図を探偵する 新潮社 新潮文庫 (2004/08)  今尾 恵介(著)

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地図を楽しむ中・上級編, 2004/10/5

地図をいろいろなやり方で楽しんでいる方は結構多い。基礎的な知識と経験をお持ちの方は、この本で、さらに地図の奥深さを体験し、実地でレベルアップが可能です。少々「オタク」ッぽい内容・知識も披瀝されますが、そのあたりに関心ない方は飛ばして読めば良いだけ。

ちなみに、私の場合、地図を持って旅したり、時々地図を眺めては、行ってみたいなここの国、と楽しんでいる程度。そんな私には、第I部のいわば「地図を持って探し歩く旅の実践編」がおもしろかった。牛久沼のほとりに「〆切」を求める話は、その近くに住んでいることも与って、また歌志内線の廃路跡をたどる旅は、40数年前、その地に友人を訪ねた旅を思い出したなど全く私的な理由で、夢中になって読んだ。能美線跡の探索のしかたのユニークさ、そして第III部の読図演習編は、人工の山を読みとったり(そこに陵を加えるのはチョットこじつけ?)、消えゆく地名からわが国文化の行く末を思ったり、読図の楽しさを教えてくれる。外国の地図も多く引き合いに出され興味深いが、第IV部の「地理院地図への批判・提案編」などでは比較対照例として見ることも。

しかし、私の知識・技能が高くないためか、特に第II部以下では、読んでいて理解できないところが時々あり消化不良気味。例えば、「日本の中の『アメリカ合衆国飛び地』・・・それにしても米軍住宅のこの余裕のスペース」と図の説明に書かれても、どれが米軍住宅かが私には読みとれなくて、せっかくのジョークに応えられない;大泉学園の飛び地がどの部分か結局理解できない;「ブラ行灯(あんどん)式時刻表」と書かれても私にはイメージがわかない;等々。でも、それらを割り引いても「地図を読む中・上級向け」と思って読めば教えられるところが多い本です。地図は奥が深いのです。


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