統合心理学への道―「知」の眼から「観想」の眼へ

ケン ウィルバー(著) 松永 太郎(訳)   春秋社

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心理学と銘打っているが、哲学といってもよい, 2004/8/3

心理学と銘打っているが、哲学といってよいほどに視野は広い。統合と形容詞がつく所以でもある。統合といってもそれはとても難しい。ケン・ウィルバーは、まず、個人・集団を内面・外面に分けることから生ずる4つの象限、すなわち、内面・外面、個人・集団という二つの軸からなる2次元座標系を設定する。しかし、それはあらゆる物事からなる「世界」の断面に過ぎず、その「世界」を階層構造としてとらえようとする。それもホリスティックな中での階層だから、・・・クォーク、素粒子、原子、分子、細胞、器官、組織、個体、種、生物、社会、地球、太陽系、宇宙・・・などと果てしなくつづく。彼はケストラーにならって「ホロン階層」とよぶ。それらがいろいろな関係でつながるのであるが、ある現象が、その主要な関係として上記の4象限のどこにあるかをみることで分かりやすくなるとも言いたいようである。さらにそれは、時間と共に動くのである。そのような理解の上で、彼は、心理学の諸問題を扱うとどうなるのか、この理論がトランスパーソナル心理学とどんなに異なるものか、などを示そうとする。

あわせて、とくに後半では、彼のこれをも含めた多くの著作の簡潔な内容紹介、統合心理学の世界における位置づけがされている。

統合された結果としての最後の章、第13章では、あたかも老荘の書を読んでいるかのよう。統合されウィルバーの頭の中に再構成された世界は、しかし、私のような凡人にはいまだ正確には理解しがたい。いや、いまだ彼の中でも結晶として析出していないのではないか。

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