辻邦生が見た20世紀末   辻邦生(著) 信濃毎日新聞社(2000/07)
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ロマネスクの作家が時代に向けた真摯な眼,  
2001/1/6

「背教者ユリアヌス」「嵯峨野明月記」「西行花伝」などで知られた故辻邦生氏の時事評論と聞けば、一体、どんな論を展開しているのだろうかと思う。信濃毎日新聞に連載しただけあって、氏が学生時代を過ごした松本のこと、しばしば通った山荘のある軽井沢のことなど、そこに読み取れる自然に向けた温かい眼差しは、未来への環境保全の重要性を訴え、平和の先鋒としてのわが国の憲法を世界に押し出すことを勧める。これらは、ロマネスクを追求する眼と、人に向けた温かい眼とに共通する心だろうと思う。ひとつ気になったのは、政治を変えるべく期待されて誕生した細川内閣に対し繰り返し述べられる強い期待と、それが消滅した時の無言、その間に読み取れるギャップ・・・そこに私は深い悲しみを読んだが、読書子の読みや如何?


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