辻邦生のために  辻 佐保子(著) 新潮社 (2002/05)
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辻邦生との生の日々を夫人が語る,  
2002/6/24

辻邦生逝ってのち、佐保子夫人は共に過ごしたいくつかの場所にはしばらく行くことが出来なかったという。しかし、時はふたたび記憶の中に夫=辻邦生を呼び戻してくれるようになった。夫人の筆は、在りし日の夫の姿を、名作の生まれた場所や時を、そして夫の知られぬ感性のひらめきを徐々に映し出して行く。高輪のマンションで、パリのアパルトマンで、軽井沢の山荘で、そしてドウィノの崖の上やオーバーエンガディンの水辺で、共に築いた生の日々を生き生きと想い描いてくれる。夫の茶目っ気なども。最後まで読んで、この本の奇妙なタイトルにある「ために」はforだけでなくbyの意味もあったのだ、と気づくことができる、ということを私は書いてはいけないのかも知れない。


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