朝鮮通信使―江戸日本の誠信外交  仲尾 宏 (著)  岩波新書 新赤版 (1093)   岩波書店 (2007/09)

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「誠信の交わり」の歴史を学ぶ,  2007/11/23

徳川時代が始まるとともに朝鮮通信使が派遣されるようになって、今年(2007年)はちょうど400年。それを知って、かねて気になっていた朝鮮通信使について勉強してみました。

朝鮮半島と日本の関係は、朝鮮通信使のことを抜きにしては考えられないでしょう。この本は、それを考えるための格好の啓蒙書です。入門書というには、厳密を期した文体や言葉遣いに難しさを覚えるとはいえ、基本的な知識を与えてくれます。東アジア全体の関係を考えるのにも有効な視点を与えてくれます。

全7章の内、4つの章で、江戸時代の朝鮮通信使の歴史、具体的姿・行動、日本側の対応などについて時を追って解いています。第5章で、文化交流の諸相を紹介します。序章と終章では、歴史的、今日的な朝鮮通信使の意義を考えます。

この本は内容豊富で、読み手の視点如何で、いろいろな断面から、朝鮮通信使を眺めることが可能です。たとえば、秀吉による文禄、慶長の両役(と、明治の征韓論以降の日本による朝鮮半島侵略・・・本書の直接対象外)以外はもっぱら友好の歴史が維持されていたことが分かります。秀吉の侵略の後、10年も経たずに、通信使が日本に派遣されているのは驚きです。また、各地に残る民俗芸能に、朝鮮通信使の置きみやげの跡が見て取れます。少しですが、朝鮮蔑視の歴史についても言及されます・・・等々

この書をつらぬく最大のキーワードは、「誠信の交わり」でしょう。この言葉は「実意と申す事にて、互いに欺かず、争わず、真実を以て交わり候を、誠信とは申し候」とのこと。「誠信」は書名の副題にも現れます。

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