海霧(上・下)  原田康子著  講談社 (2002/10)

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女性作家の目が冴える, 2010/1/17

幕末、明治、大正、昭和と生きた人びとの物語といえば、ドラマチックでおもしろいにちがいない。それが、女性作家の目で描かれるとなると、また違った面白さを醸す。この物語は、作者の実家の歴史がモデルとなっているのだそうです。先祖の地、佐賀県にまで通って資料を調べたりして出来たこの物語は、「挽歌」からつづいてきた原田文学の流れを決定的に変えました。しかし、その流れは、彼女の死(2009年10月20日)によって永遠に終わることとなってしまいました。

女性作家の目で描かれたこの小説には、衣装のこと、料理のことなどが詳細に描かれます。主人公は、始めが幸吉で後半は連れ合いのさよという感じで描かれますが、実はさよと娘と孫娘たちなのかも知れません。女性作家の目が冴えている物語です。

さらに、北海道に根を下ろして活躍した作家らしく、北の大地の物語でもあります。

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