海を渡ったモンゴロイド―太平洋と日本への道  講談社 (2003/03)  後藤 明(著)

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ハワイ、タヒチ、グアム島、ニュージーランドなどへ旅する人に, 2005/1/26, 2005/1/26

ハワイをはじめとする太平洋の島々へ旅する日本人は多い。そして、海の色、珊瑚礁とそこの魚の珍しさ、異国の花や鳥の美しさに感嘆の声を挙げ、非日常の時の流れに生き返る思いを抱いて帰ってくる。しかし、そこに住む人々の来し方や日本人との関係に思いを馳せる機会はさほど多くないと思う。

この本で著者は、東南アジアから太平洋にかけての民が、いつの時代にどこから、どのようにたどり着き、現在に至っているかを語ってくれる。現地で片側にフロートのついたカヌーを見かけるが、それらカヌーがどのように開発され、この広い海原をどのように移動したかなども紹介してくれる。この地域から日本に来る力士やラグビー選手の大きな体格がどのように獲得されたかなども解き明かされる。日本人との関係も触れられる。海人という概念も面白い。太平洋の海人が余所から来たとしても、実は今あるその場で形成されたのだ、という指摘は目からウロコ。それらを、人類学や考古学、言語学の成果や神話、遺伝子情報などを駆使して解き明かしてくれている。

目の前に新しい世界が拡がり、太平洋とそこに住む人々がグッと身近になる所説の山である。

この本と別に、太平洋地域を歴史学など社会科学的視点から明かしてくれる本として増田 義郎 (著)「太平洋-開かれた海の歴史」(集英社新書)がある。両書を読めば、太平洋学概論の講義を受けたことになり、この地域の旅がいっそう奥深いものとなることうけあい。

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