旅と病の三千年史―旅行医学から見た世界地図  文藝春秋 (2002/11) 文春新書  浜田 篤郎(著)

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旅と病の歴史、驚きづくし, 2002/12/1

海外に何回か行くと多少なりとも病気やケガの心配をすることになる。しかし、幸いにも、何とか大したこともなく切り抜けてきた、と思いつつも、いつか外国で大病や大けがに見舞われないかと心配しつつもまた行こうということになる。

この本を読むと、旅行医学というものがあったのか、と驚く。驚くのは、それで安心する面もあると同時に、エッそんなのあったの、身近には無いに等しいよな、という類のものでもある。また、旅行医学は、わが国では戦後、かつての植民地主義や帝国主義を彷彿させる禁断の医学とされていた、というのも驚き。ナポレオンが冬のモスクワで冬将軍にやられたと言われてきたが、さらに発疹チフスという敵もいた、ということ、また戦争では、戦死者より戦病死者の方が近代までは多かったことも驚きであった、などなど驚きに満ちた本である。

 著者濱田さんの社会時評的考察は、驚くほど常識的で浅薄に聞こえるところさえあるが、そこは読者が必要に応じて補えばよい。ともかく、物や情報と共に人もおおいに世界的に動くようになった今、快適に動けるようになるため、著者の主張は、耳を傾けるに値する大切なものであることは間違いない。

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