これからの日本の座標軸  品川 正治(著)  新日本出版社   (2006/10))

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財界人の急進的見解にビックリしました,  2008/1/24

著者は、旧制三高在学中に応召、終戦で復員中に新憲法を知り、そのすばらしさに復員兵同士抱き合って欣喜雀躍した経験をお持ちです。その後、東大にすすみ、新しい日本はどうあるべきかを求めて諸教授の本や論文を一生懸命になって勉強したといいます。どんな教授のか、といえば、南原繁、丸山眞男、大内兵衛、大塚久雄、山田盛太郎、矢内原忠雄、有沢広巳、大河内一男、宮沢俊義、横田喜三郎、和辻哲郎、金子武蔵、東畑精一というのだからすごい。知性をこの上なく研ぎ澄まされたことと想像できます。その後も、どうやら苦労しながら、日本火災社長、経済同友会専務理事などを歴任してこの本を書くに至ったようです。

著者は、終戦直後の青春のひとこま、教育基本法のもとに新たに出来た新制中学校の第一期生を教えたことがあります。この本は、それから43年後、その生徒を対象に再度、15年にわたって12回行った社会科の授業の講義録です。今の日本はこのままではいけない、と思う人が多いのですが、本書では、それに対し財界人のひとりとしてひとつの方向を提示しています。

その内容は、財界人だけあって、ここ10数年の経済などを的確に評価し、時に予測し(外れることもありますが)財界人らしい見方を開陳されているのですが、反面で、財界人がこんなことを考えておられるのか、と驚くこと続きです。いくつかを拾い書きしますと:

・わが国は企業社会が進みすぎた反面、市民社会が未熟で乖離が大きい。これからは市民社会の価値を育てることがカギ

・企業からの政治献金は正道ではない

・これからの日本の社会経済システムは家計に軸足をおいてこそ

・憲法9条は、これからの世界で普遍性をもつようになるだろう

品川さんは、これらを修正資本主義といわれるのですが、その内容は、ほとんど革新政党の水準に近いといえましょう。品川さんは、このような見解をおもちの財界人のおひとり、まだまだこのような急進的論客がいらっしゃると思われます。革新政党はいっそうがんばらないと財界にまたもや追い越されてしまいかねません。

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