富士山の雪は御殿場側に多い

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インターネットの仲間MIEさんがご自分の掲示板に冬の富士五湖巡りの写真を掲載して下さった。白鳥のいる山中湖からの写真である。その写真を見ると左側の低い所まで雪が積っている。東南の御殿場方向である。

 
左:山中湖からの富士(2007.1.31;MIEさん撮影)  右:飛行機から(2006.2.22)

飛行機からの写真は去年2月下旬であるが、左上方向が御殿場。そちら方向に雪が伸びている。これは日頃、よく使う東海道新幹線から見ても同様に見え、なぜだろうといつも思っていた。日本海側に雪が多いことを考えると、白鳥の写真でいうと右の方が多くても不思議じゃない。

この質問をMIEさんの掲示板でさせていただいたところ、3名の方からお答えを頂いた。地図を眺めながらそれらをまとめてみると、どうやら次のようなことらしい。

谷と風と水、これらが雪の降り方3要素のようである。

富士山は、言うまでもなく孤立峰である。富士山の冬の季節風は北西〜西北西からが多い。御殿場方面が風下にあたる。それらの風は、低温なだけでなく、本州を吹き抜けてくるからかなり乾いていると考えられる。だから、本栖湖側にはあまり積もらない。雪が多く降るためにはそれだけ湿った空気が必要で、それは、南の駿河湾や東方の相模湾から来ると思われる。

両湾から、富士の嶺に向かっては、川=谷沿いに風=空気が登ってきて吹き付けそうである。富士山の周辺の地形を見てみよう。駿河湾に向けては狩野川の支流の黄瀬川が東名高速道と併行して御殿場から流れ下っている。西に愛鷹山がそびえ、東には箱根の山々が、金時山、長尾峠、箱根峠などと連なっている。他方、相模湾に向けては、やはり御殿場あたりから、酒匂川が東に流れ出し、山北あたりから南下して小田原の平野に下って行く。南や西が箱根の山の天下の険、北側には丹沢に連なる山々が、籠坂峠、三国山、高松山とそびえている。これらの山々はいずれも1000m級の山々であって、壁のようにそびえている。このように、二つの川が二つの谷を形成して海につながっている。

すなわち、水を含み湿った空気が、駿河湾からは、黄瀬川の谷沿いに御殿場方向に、また相模湾からは小田原から酒匂川の谷に沿って小山をぬけ須走方面に吹き上げられて来る。これらの川の上流の谷間では、東名高速を何度も走っていると経験するように、しばしば濃霧が発生する。このことから湿った空気が遡って来ていることが分かる。これらの風は、北西風に比べ明らかに温度も高いと思われる。

両湾からの湿った空気は両方の川の谷頭つまり御殿場辺りで合流して富士山の斜面、須走あたりを駆け上る。他方、乾いた冷たい風が、北西から吹いてきて富士山を越え、風下で乱流を起こしたりしている。両方の風が接触すると、暖かい方の風に運ばれた水は冷やされて雪となり御殿場側の斜面に降り積もる。そのため、御殿場側には本栖湖側に比べ多くの雪が降り、低標高にまで降雪をもたらすこととなる。御殿場でゴルフの時小雪が舞うことが多いとも聞く。

ありがたいことに、またひとつ、何気なく見ていた風景に新しい意味が注ぎ込まれた。

謝辞:白鳥と富士の写真を使わせていただいたMIEさん、並びにMIEさんの掲示板を通じて私の質問にお答えいただいたSAMさん、六八さん、MIEさんに深謝します。

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