感動を呼ぶドラマ・・・「北の国から」考

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 「北の国から」というテレビドラマは、かれこれ20年くらい前から何年おきかに新しい筋書きで続けられてきた。これが、大変人気で、最近になってつづきを望む声が強くなっているという。

このドラマの呼び起こす感動は、どこからくるのか。倉本聰の腕によるといってしまえばそれまでだが、そのなかみは、と問われれば、何が起こっても逃げずに向かい合う姿勢の真摯さ、ではないかと思う。

あのドラマでは、とても大変なことがしばしばおこった。親の離婚、その後の男手ひとつでの子育てを含む生活、住む家の火事、農作業中の事故死、失恋、螢の「不倫」、等々、大小あげればどんどん出てくる。それに、主人公たちはしっかり向かい合う。我々凡人の実生活では、それらのかなりの場合、臭いものには蓋、だったり、さわらぬ神に祟りなし、だったり、そっておけそっとけ、だったり、逃げてしまうことも対処法の内であることが多い。しかし、このドラマでは、逃げずに向かい合う。ある時には、我慢して受け入れたり、あるときには元にある原因まで掘り下げて掘り下げておおもとにある大切なものを探しだし、納得を得る。いずれにせよ、真摯に向き合う姿勢が類型的でなくリアルに追求されている。

実生活でも、本来は、そのように向き合うべきだろうと思う。しかし、それは言うに易く行うに難いのである。

ドラマでは、それを易きに流していたら安もののホームドラマで終わってしまう。上を目指して止まない生命のエネルギーは、しばしば下に押さえつけようとする現実の重力に押しつぶされる。生きようとする生命(いのち)は、その時に下降する力に抗って上を目指そうと戦いを挑む。そのせめぎ合い、そこに人生のドラマは待ち受けている。そこで、いかにドラマチックに描くか、ドラマの感動は大きく異なってくる。感動を呼ぶドラマは、そこがリアルで生き生きとして思いがけないような展開を見せてくれる。そういうドラマは、人生にしっかりと向き合って生きてきた作者でないと書けない。

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