つくばで自転車に乗る  
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つくばの自転車環境は、日本では最も良い部類ではなかろうか。東大通り、西大通りと呼ばれている道路には、自動車道と立派な並木列で隔絶された幅5〜6mほどの歩道自転車道がついている。歩道と自転車道は、白線が引かれているだけだが、2mほどの自転車道と3〜4m程の歩道が、それぞれ白字の日本語で明記されている。両者を隔てる白線は所によっては煉瓦用の敷石が埋められていることもある。そんなところは、20数年経った今では草が生えて、歩道と自転車道を、相互乗り入れ不可にしている。

並木列は、なかなか立派なもので、東大通りのケヤキ並木は鬱蒼としており、日本並木道百選にも選ばれている。その他、カエデやユリノキ、プラタナス、マロニエなどが植えられている部分があり、四季折々に化粧し直して、歩いたり走ったりする人を楽しませてくれる。

問題は、交差点の段差。縁石が、ひどいところは高さ数cmもあって、ママチャリで登るに際しては、お尻を挙げないと衝撃で尾てい骨を折りそうである。ある箇所では、そこにセメントを塗って滑らかにしてしまい、自転車がスムーズに上がり下りできるようにしてくれている。近所の住人の仕業であろう。そうしても道路の機能に悪影響は無いようだから、全てそのようにしても良さそう。随分前に、自転車愛好者が関係機関に要望を出したのだそうだけれど、実現していない。

自転車文化というものがあるようで、中国の自転車洪水は有名だし、ヨーロッパにはそれの高い国がある。フランスはツール・ド・フランスが名高いし、イタリアの自転車は自転車乗りには評判がよいらしく、日本でも何十万円で売られている。しかし、本当は、庶民が自転車とどうつきあっているかが肝心なところ。ヨーロッパを旅していると、夏など、サイクリング車を短パンの女性が長い足で颯爽と走らせているのをしばしば目にする。それを最初に目にしたのは、ドイツの田舎町だったが、ドイツの自転車文化はかなり高いものがある。自転車専用道も多いし、自転車文化が庶民に根付いていて、例えば、細い田舎道で自転車が走っていて後ろから自動車が来たとする。狭くて追い越せないとき、追い越せるところまで文句も言わずにゆっくりと走ってくれる。それがあたりまえなのだという(須山 実著「時速15キロの旅―もっとスローに!ヨーロッパ自転車道中記」東京書籍)。自転車用の地図もよく整備されている。

オランダでは、自転車に圧倒される。オランダ人は、しばしば背が高い。巨人の乗る自転車はサドルの位置が私の胸の位置。通勤時間などには、そんな自転車がつぎつぎと脇をすり抜けてゆく。しかし、町中を自転車専用道が走っているので歩行者は危険ではない。自転車用の交通信号も低い位置についていたりして最初に見たときは驚いた。それに、列車に自転車持ち込み可の車両がある。普通の客車でも乗せられるようだが、日本の貨車のように椅子のない自転車用スペースがあって、そこには自転車に人が乗ったまま入っていける。オランダは自転車文化の最先端である。     

それらに比べると日本は自転車文化においてはだいぶレベルが低いといわざるを得ない。自動車文化が高い分、自転車は邪魔者にされることが多い。放置自転車の多いのも、自転車文化の低さの証明かもしれない。列車には自転車用スペースはないし、自転車専用道の整備もまだまだである。つくば周辺は、冒頭に記したように学園地区のそれはかなりなものであるが、その他にも、土浦・筑波山自転車道は、かつての関東鉄道筑波線の廃線跡を整備してつくられたもの。筑波山や、遠くに富士山や日光、那須の山々を望みながらの走行は気持がよい。私の希望は、霞ヶ浦周遊自転車道。一部には専用道があるのだが、ほんのわずか。夏なら早朝にスタートすれば日暮れまでには帰り着けるコースなので、是非、実現してほしい。つくばの西方、小貝川沿の専用道も整備されつつある。しかし、それらを相互につなぐ専用道がない。日本の自転車道は細切れなのである。

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